こんにちは。本日は看護師より『ヒトはそもそも妊娠しにくい』というお話から不妊治療に関するお話をさせていただきます。
ヒトの男女の妊娠率を皆さまはご存じでしょうか?
妊娠に関する機能に問題がない男女のカップルが避妊しない場合、ヒトは1回の生理周期のうちに約20%が妊娠するといわれています。ちなみに他の哺乳類で比較するとウサギは約90%、マントヒヒは約80%で妊娠するといわれており、私たちヒトはそもそも一度あたりの生理周期での妊娠率が低く、『ヒトはそもそも妊娠しにくい』ということがおわかりいただけたかと思います。
では妊娠率20%のヒトのカップルが、後に妊娠する可能性はいったいどれくらいでしょうか?
1周期あたりの妊娠率が低くても、何度も積み重ねることで妊娠率(累積妊娠率)は徐々に上がります。計算上では半年の累積妊娠率は約70%、1年での累積妊娠率は90%を上回ります。そこで妊娠に至らなかった残りの10%のカップルは不妊の原因が何らかあるとみなして、医学的な介入が必要と判断する一つの目安ができます。
日本産科婦人科学会では不妊症を「生殖年齢の男女が妊娠を希望し、ある一定期間、避妊することなく通常の性交を継続的に行っているにもかかわらず、妊娠の成立をみない場合を不妊という。その一定期間については1年というのが一般的である。なお,妊娠のために医学的介入が必要な場合は期間を問わない。」と明言されています。
では不妊治療を効率良く行う上ではじめに行うこととは一体何でしょうか?
これは皆さまご存じの通り治療計画前に行う初診のスクリーニング検査です。初診にご来院いただいたら、男女ともにスクリーニング検査を受けていただき不妊の原因を探っていきます。1996年のWHO(世界保健機構)の発表によると、男女別不妊原因の頻度と内訳は女性のみ41%、男女ともに24%、男性のみ24%、原因不明11%とされています。このデータを見れば、性別によらずスクリーニング検査で原因を追究する必要があることがご理解いただけるかと思います。
スクリーニング検査の結果から必要な治療を判断し行っていくことが大切です。保険診療の場合はお二人でご来院いただき治療計画を立ててタイミング療法、人工授精および体外受精を行っていきます。当院では身体的および経済的に負担が少ないタイミング治療や人工授精からご提案する場合もあれば、年齢や不妊期間を考慮して始めから体外受精をご提案させていただくこともあります。
スクリーニング検査で異常がない、不妊原因に対するアプローチを行っているのにも関わらず妊娠に至らない場合は、体外受精を行うことでスクリーニング検査では見つけられない不妊原因がわかる場合もあります。例えば受精障害がある方は体外受精を行ってはじめて不妊原因が明らかになるような場合もありますし、不妊原因ははっきりとわからないけれど体外受精をしたら一度で妊娠できたということは珍しくありません。
最後になりましたが、不妊治療はご夫婦が同じ方向を見据え、ご夫婦が納得した方法で行うことが重要です。診察のごく短い時間だけではお二人の治療について十分に理解し納得することは難しいかもしれません。ご提案させていただいた治療方針でわかりにくい点などがございましたら、診察時に医師か看護師にお声掛けいただければ、いつでも処置室にて看護師とお話させて頂くことが可能です。また、ゆっくりとお話をご希望される方には看護師相談室のご利用をお勧めしております。私たち看護師はいつでも皆さまとお話させていただきたいと思っておりますのでお気軽にお声掛けください。